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これは、かの有名なベストセラー作家の佐藤愛子先生の小説で、亡くなった少女があの世から電話を掛けて来るという、実際に起きた驚くべき事実を基にした小説なのです。小説では高林先生という医師が医学部受験の高校生に向けて講演会をしてそれを聞いて感激した女子高生と、先生が携帯電話でやり取りをするほどに親しくなりました。その少女が見事東京の大学の医学部に受かったのです。そこで東京に行く前に一度会おうということにり、少女は憧れの先生に会えることをとても喜んでいたのです。ところが約束のその日、その場所に時間が来ても彼女はいっこうに現れません。実はちょうどその日に少女は交通事故で死んでしまっていたのです。
    ところがある日、死んだはずの少女から電話がかかってくるのです。、、、、      あらすじはこのくらいにしてとても興味深い小説ですから一読をおすすめします。新潮社から文庫本になって出ています。
    この本のタイトルが決定する経緯についてちょっとお話ししておきましょう。小説新潮に連載されたものを単行本にして出版したのですが連載時には「冥界からの伝言」というタイトルでしたが単行本になったら「冥界からの電話」となっています。このことを佐藤先生が私に「行本さん、あなたは編集者だからお分かりになるでしょう。作家にとってタイトルは命なんですよ。その、タイトルをいまさら変えたいと言って3人の編集者がやって来て説得ですよ。どうなんでしょうねえ」と言われます。私は「タイトルを先に決めて、それに添って書かれる訳ですから作家にとっては理不尽ですよね。でも、出版社としては伝言より電話とした方が読者に対してよりインパクトがあって売れると判断したのではないですか」というようなやり取りをしたことを思い出します。      さて、ここまで書いてきて、ネタバレです。実は高林先生というのは佐藤先生のエッセイにはたびたび登場する鶴田光敏先生のことで、医学博士である先生に実際に起こった出来事なのです。佐藤先生の活達な筆捌きで「あの世の仕組みはどうなっているんだろう」と興味深い展開となっています。
冥界(あの世)と現実世界とは一線を越えてはならない深い不文律があるのだ、と思い知らされる小説です。

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